授業科目名 配当年次 開講期間 所要単位 必修・選択 担当者名
人間健康特講II 1 前期 2 選択 西尾 敦史


【授業の目的と概要】

危機管理論

現代社会では、不慮の事故、災害、気候変動、失業、原子力発電の事故、テロの脅威など、さまざまな社会的リスクに囲まれている。本授業では、リスクとは何か、危機的状況をどう認知し、その大きさや影響をどう把握し、それにどう対応すべきか、というリスクマネジメントの理論と実践について内外の事例を検討する中から学ぶ。これからの社会の中で、自分自身の危機的状況に対し、どう対処すべきか、自らの問題として考えることができるようにする。

【授業の方法】

講義を中心にすすめるが、各回の課題(ワーク)テーマについてアイディア出しのグループワークを行ったり、意見発表や共有のためのディスカッションを行う。

【各回のテーマ】

第1回 危機とは何か

第2回 現代社会とリスク

第3回 危機管理とリスクマネジメント

第4回 危機の予知と回避

第5回 危機管理行政の事例研究

第6回 危機管理の実際1~自然災害(地震)

第7回 危機管理の実際2~自然災害(水害)

第8回 危機管理の実際3~パンデミック

第9回 危機管理の実際4~テロリズム

第10回 現代社会と危機管理1~安心安全なまちづくり活動

第11回 現代社会と危機管理2~行政組織

第12回 現代社会と危機管理3~ストーカー犯罪等の現状と対策

第13回 危機管理のための理論1~失敗学

第14回 危機管理のための理論2~リスク・コミュニケーション

第15回 危機管理のあり方 授業のふりかえりとまとめ

【各回の内容】

第1回 危機(クライシス)を発生させない管理がリスクマネジメントである。危機、リスク、クライシスなどの概念を整理し、危機管理についての授業ガイダンスを行う。

第2回 「グローバル規模で生命を危険に曝す次元にまでリスクが達し、生活環境や社会の発展にますますリスクが影響を与えるようになる」というウルリヒ・ベックの「世界リスク社会論」から現代社会のリスクを理解する。

第3回 危機の存在の理解、その規模や可能性、予想される問題についての予測、危機(リスク)自体の回避および予想される問題の回避、新たな危機(リスク)に対する認識と備えについて学習する。

第4回 自然災害、経済危機、テロリズムを例に、危機管理のプロセスにおいて、「危機の予知・予測」の理論について学び、科学的な推論を通した対象となる危機の発生メカニズムを的確に把握する。

第5回 大規模な危機(クライシス)への対処について課題となることが多い、危機管理行政の連携などについて「シン・ゴジラ」を題材に検討する。

第6回 地震災害が発生したときの直後の対応から一段落するまでの行政や企業における危機管理の実際を、過去に発生した失敗事例を取り上げ事例検討する。

第7回 水害が発生したときの直後の対応から一段落するまでの行政や企業における危機管理の実際を、過去に発生した失敗事例を取り上げ事例検討する。

第8回 インフルエンザなどの感染症、化学汚染、放射能汚染など、国境を越えて急速に拡大し、人々の健康に重大な影響を及ぼす事案に対してWHOなどによる対処の実際について学ぶ。

第9回 日本の危機管理体制を変える歴史的な転換点となった地下鉄サリン事件を取り上げて、危機管理の実際から学ぶ。

第10回 社会生活の基盤は、安全安心な地域社会の実現であり、犯罪情勢や子ども、高齢者等を取り巻く情勢、防犯地域等の活動状況を学び、地域と一体となった安全安心まちづくり活動について理解する。

第11回 国の組織における不祥事案の概要を題材に、不祥事案が組織に与える影響や信頼回復の困難性等を解説し、不祥事案を未然に防止するための基本的な取組みを理解する。

第12回 ストーカー犯罪の定義、態様、特徴等を解説し、犯罪の発生状況や相談受理状況を取り上げてストーカー犯罪の現状を知るとともに、被害防止のための基本的知識について理解する。

第13回 過去の失敗事例をデータベース化し、その要因を分析し、将来の失敗を予測し、致命的な損失を回避する失敗学の観点から危機管理の視点について学ぶ。

第14回 社会を取り巻くリスクに関する正確な情報を、行政、専門家、企業、市民などのステークホルダーである関係主体間で共有し、相互に意思疎通を図るリスク・コミュニケーションの観点から危機管理を学ぶ。

第15回 授業をふりかえり、現代社会における危機管理のあり方について総括する。

【事前・事後学習】

各回の授業の課題テーマに関して、配布資料を参考に、書籍、メディアやインターネットなどで情報を収集し、関連する知識を得ておく(2時間)。

各回の授業後、課題テーマに対する意見共有・ふりかえりを踏まえて、自分自身の意見・見解をまとめておく(2時間)。

【課題に対するフィードバックの方法】

毎回の授業の課題テーマに関する意見発表・全体での共有・ふりかえりを踏まえて、コメントを行う。次週の授業において、次のテーマへの関連する視点やポイントについて提示する。

【授業の到達目標】

現代社会における危機的状況の背景、対応について理解できる。【人間健康学部DP(3)】

リスクマネジメントを設計し、対応できる実践力を身につける。【人間健康学部DP(1)】

【評価割合 - 筆記試験《%》】
0
【評価割合 - 実技試験《%》】
0
【評価割合 - レポート《%》】
50
【評価割合 - 平常評価(授業への参加・貢献度)《%》】
20
【その他(授業内課題等)《具体的内容》】

各回の授業の課題テーマに対する意見

【評価割合 - その他(授業内課題等)《%》】
30
【テキスト】

資料を配布する(インターネットによる)。

【参考図書】

矢守克也(2013)『巨大災害のリスク・コミュニケーション 災害情報の新しいかたち』ミネルヴァ書房

吉井博明、 田中淳 編(2008)『災害危機管理論入門 防災危機管理担当者のための基礎講座』弘文堂

畑村 洋太郎(2005)『失敗学のすすめ』講談社文庫